「恋や恋なすな恋」

jyougen22005-10-17

キツネ娘

1962年作品 監督…内田吐夢 主演…瑳峨三智子


80年代の日本青春映画のビデオが全然みつからない。まあ、記憶のみで書けと言われれば書けないことも無いが。実際、このブログの最初の何本かは思い出しながら書いたし。とは言え、やっぱり実際見てすぐ書くのとじゃ燃え方(萌え方)が違うし。そんなわけで今日はちょっと古い作品になるが、こないだNHKの衛星でやっていたこの映画が大変面白かったので。
瑳峨三智子さん。どんな方だったのだろうか。山田五十鈴の娘。やっぱりスターというものはその時代の空気と密接にリンクしているものだから、こうやって作品だけ与えられると、大変もどかしい感じはある。同時代でこの映画を見た方の話とか聞きたいですね。自分はこの映画で初めて見ました。えーと、1935年生まれというのが正しいとして、この映画の時は27歳。見えない。今の27歳と比べてはいけないのだろうが、とにかく色気ありすぎ。
この映画では3役を兼ねている。双子の姉、その妹、そしてその妹に化けるキツネの娘。姉は気の強い女房、妹はおっとりとしたお姫様、キツネは田舎の元気な娘という風に演じ分けているのだが、このキツネの時が実にいい。ハンサムな大川橋蔵を見て思わず一目ぼれしてしまう。狐が人間と恋をするときは、一族から追い出される覚悟をしなくてはならない。そうと分かっていながらどうしても自分の気持ちを抑えらない。そんな初心さと獣の色気をミックスした絶妙の演技を見せてくれる。この映画、リメイクしたらきっと面白いとおもうけど、こんな演技できる女優さん今いないだろうなあ。
物語は人形浄瑠璃芦屋道満大内鑑」を溝口健二作品で有名な依田義賢がシナリオ化したもの。「恋しくば尋ねきてみよ和泉なる信太の森のうらみくずのは」の和歌で有名な葛の葉の話。監督は巨匠、内田吐夢。様式的な演出をさらっとこなし、その天才っぷりを存分に示している。とにかく全編内田吐夢の美意識とエロさが炸裂している傑作。蕗谷虹児も参加した美術が素晴らしい。
ちなみに途中キツネの群れがアニメで表現され、大変かわいい動きを見せる。知らなかったがこれを書いているのは東映動画の大ベテラン、森康二森やすじ)らしい。