「ハッピーエンドの物語」
文化祭、タイムマシーン
1991年作品 監督…栃原広昭 主演…森本よしえ、山田久子、永椎あゆみ
80〜90年代初頭の和製青春映画に関しては、もうレンタルビデオ屋では見つからないので、随時手に入り次第書いていくことにする。
と言うわけでこれ。これもレンタルビデオ屋で探して見つからなかったものの一本。何といつの間にかDVD化されてました。青春映画の隠れた佳作。いや、傑作と言ってしまっていいでしょう。1991年という日本の青春映画が終わりかけている時期に発表されたため、あまり人の目に留まらなかったのが残念。しかし、この時期にしか作られ得ない映画でもあるのもたしか。と言うのはつまり80年代青春映画の総決算的な作品なんですね、これ。
高校の物理教師がタイムマシーンを発明、女生徒を実験台に使ったことから始まる大騒動…ということで一応ゼメキスの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を下敷きにしている(教師役の嶋田久作は「デロリアン」という自転車に乗っている)のだが、文化祭を舞台にしていることで分かるように押井守「ビューティフル・ドリーマー」、大林宣彦「時をかける少女」、それから「アイコ16歳」「四月怪談」その他ありとあらゆる80年代映画のエッセンスがぶち込んである。しかしそれが2000年代に入ってからオタク系クリエイターによって作られる引用に満ちた作品と違うのは、全編に漂う無邪気さと言うか、自分の作っている映画に対する無条件の信頼。「自分達が好きなものを作れば観客にも喜んでもらえるだろう」という確信。そして実際に観客も作り手達と同じ感性を持って映画に身をゆだねることが出来た。監督と観客の間に信頼関係が成立した、そんな時代の作品にしか無いゆるい空気が実にいい。これ以降日本の青春映画の監督達は「自分はこういうの好きだけど、観客からオタクっぽいと思われるんじゃ…」とか「これは男の観客にはアピールするかもしれないけど女性層に受けないからストーリーを変えよう」とか「好きな人だけ見てくれればいい。分かる人には分かるはずだ。一見さんお断り」だの、ひどいのになると「いやあ、オタクっぽく見えるかもしれないけど、これ全部引用ですから。僕はこんなの好きでやってるわけじゃないですよ」なんて言い出してどんどん泥沼にはまり、アニメに観客を奪われてしまう。
ま、それはともかく80年代の和製青春映画が好きって言う人は是非見て頂きたい。森本よしえ、山田久子を始めとしてこの時代の女の子は(男も)髪の毛がツヤツヤ。茶髪の生徒なんて一人もいない。そんな牧歌的な世界で手作り感溢れるSFコメディが繰り広げられます。私の好きな大沢健が例によって好演。監督もジュブナイル的な世界を構築することに見事な手腕を発揮、とにかく和みます。何年かおきに見返したくなる映画で、数えてみるとこれまでに4、5回は見ている。
スタッフについてちょっと言うと、監督は現在ウルトラマンシリーズで活躍中の栃原広昭、脚本には金子修介の弟・金子二郎が参加している。