「放課後」

小悪魔 セーラー服

放課後 [DVD]

1973年作品 監督…森谷司郎 主演…栗田ひろみ

もしかしたらある意味「萌え日本映画」史上最高傑作の一つかもしれないと常々思っている作品。少なくとも青春映画におけるエポックメイキングであることは間違いない。ようやくDVD化されるとのことで、これを機に「兄貴の恋人」「初めての愛」あたりもDVD化されて、森谷司郎再評価に繋がればいいなあなどと。何度も言いますが、森谷司郎は日本の青春映画を語る際に決して外せない一人だと思います。
確証は無いのですが、「萌え日本映画」はこの作品である意味完成されたんじゃないかと思う。「萌え日本映画」という言葉、基本的にはかわいい女の子が出てくる映画くらいの気持ちで使っているのですが、実はもうちょっと深くて。日本のある種の青春映画には、外国のそれには無い、独特の雰囲気があるような気がする。こう、今のアニメ文化にも通じるような。あえて言えば「男子向け」(「男向け」だとヤクザ映画とかロマンポルノになってしまう)とでも言おうか。外国の青春映画が男子女子どちらも楽しめるようなデートムービーを指向しているのに対し、あえて男子向けに特化した映画。それが「萌え日本映画」(「萌え」ってそういう事ですよね?)。もちろん、女性にだって「萌え日本映画」のファンはいるでしょうが。
順を追って森谷司郎の映画を見てみよう。まず68年の「兄貴の恋人」(主演・内藤洋子)。ここら辺は、まだはっきり「萌え日本映画」とは呼べない感じ。言わば『大人っぽい子供の映画』。筋立てはまるきり一昔前の少女マンガなんですが、ピアノの先生が同性愛者だったり、酒井和歌子の仕事が水商売だったりと所々妙に大人っぽい雰囲気が漂っているという作品。続いて70年の「赤頭巾ちゃん気をつけて」(主演・岡田祐介)は『男が主演の青春映画』。日本版サリンジャーとも言える庄司薫の原作を得て、木に竹を接いだような不自然さは無くなった。惜しむらくは主演が男ということ。ちょっと観客層が見えない。岡田祐介のファンとか?原作ファンは日本映画とかバカにしてそうな気がするしなあ。72年の「初めての愛」。これは『子供っぽいところのある大人の映画』。この作品については前にも書いたんですが、どろどろした大人の愛憎劇の中で、時折挟まれる若者の描写が非常に新しいというもの。しかし加東大介がコテコテの熱演してたりするし、若者はちょっと見に行かないかも。そして73年、「放課後」。遂に「萌え日本映画」がここに完成。紛う事なき男の子のための青春映画であります。
あらすじは、栗田ひろみ演じる女子高生が年上の妻帯者(地井武男)に恋をするという話。地井武男が好きなくせに、その奥さん(宮本信子)のことも女性として憧れているという。その一方で同い年の幼なじみとも屈託無く遊びに出かける。それで最後には面白半分その夫婦の仲を壊しちゃう。実際こんな女の子、ありえないですけどね。男子校生の妄想の中にしかありえない美少女を、リアリティを持ってスクリーンの上に描き出したおそらく初めての映画という事で、この作品だけはどうしてもここに取り上げたかった。