「東京上空いらっしゃいませ」

幽霊、アイドル
東京上空いらっしゃいませ [DVD]

1990年作品 監督…相米慎二 主演…牧瀬里穂

幽霊物をもう一本。この映画の知名度がどれくらいあるかは知らないが、「萌え日本映画」的には絶対はずせない一本である。この文章を書くにあたって、一応ネットでいろいろ調べてみたが、やっぱり観た人の感想に温度差がある。「死ぬほど好き」と「わりと好きかも」の間に日本海溝くらいの開きがある。まあ、言ってみればキリスト教信者にとっての聖書と、一般の人にとってのそれじゃ、同じ聖書であっても全く別物なのと同じで。普通の人が聖書を読んで、「わりと面白いんじゃない」「結構ドラマチックで良かった」等と言うそれはそれで全く間違ってないのだが、やっぱり敬虔な信者の読み方とは決定的な断絶があるはず。ということなので、このブログでベタ誉めしている映画を見てつまらないと思った方、私を責めないで頂きたい。「萌え日本映画」の特徴としては、好きな人と普通の人の間の温度差が大きい、というのも付け加えていいかも。

では、ベタ誉めさせて頂く。相米慎二の最高傑作とは言わないが、最高にキュートな一本。テオ・アンゲロプロスをこう咀嚼したかという愉快な驚き。それはまさに(実際映画の中にあるように)、一流のジャズ・バンドを使って歌謡曲を演奏したような無邪気な破壊行為だ。映画祭で見た相米慎二の照れたような笑顔を思い出す。「ガキっぽい映画作っちゃったよ」とか言いながら結構嬉しそうだった。牧瀬里穂は映画史には残らないかもしれない。しかし、この一本の映画で、ファンの心に永遠にその名を刻んだ。刻みまくった。