「みゆき」

妹、三角関係

1983年作品 監督…井筒和幸  主演…宇沙美ゆかり三田寛子

一応ヒロインは宇沙美ゆかり三田寛子の二人だが、妹役を演じた宇沙美ゆかりが輝きまくっているので、この映画は宇沙美ゆかりの映画とさせてもらう。生意気で、やきもち焼きで、時々寂しそうな顔を見せ、妹役の演技としては完璧である。井筒監督はああいう人なのでこの映画について多く語らないが、正直、井筒監督の最高傑作の一つだと思う。初期の荒削りな自主映画タッチと、商業的なスタイルが絶妙にブレンドされて他のどの作品より画面作りが新鮮。どんな事情があったのか、劇中、二、三明らかにおかしい所があるためにあまり評価は高くないが、「東方見聞録」と並んで萌え日本映画ファンなら見ておくべき作品である。(興味が無い人はスルーして欲しい。揶揄するためだけに映画を見るのはグリフィスに対して失礼だ)
ちなみに萌えの心を理解している方なら分かると思うが、サービスシーン(裸とかパンチラとか)は、あればいいってもんじゃない!…まあ、もちろん嬉しい場合もあるが、ちょっとこの映画の宇沙美ゆかりはサービス・シーンが多すぎて痛々しかった。いや、何か彼女は、明るく振舞えば振舞うほど、その裏に悲しみを秘めているようで何かほっとけない気分にさせる女優なので。
悪い予感はあたり、宇沙美ゆかりはこの後何かを勘違いした奥山和由によってアクション映画「V.マドンナ大戦争」の主役に据えられ、映画の興行的な失敗とともに芸能界を去る。 こうして我々は萌え日本映画史上燦然と輝く妹キャラを失った。萌え日本映画史は喪失の歴史でもある。ちなみに角川春樹奥山和由、一見似たような印象を持たれがちな二人のプロデューサーだが、監督作品を比べるとはっきり違いが分かる。角川春樹には「愛情物語」、「時をかける少女(リメイク版)」と、(まあ多少勘違いはあったにしろ)萌え日本映画を理解しようという姿勢があったが、奥山和由はついにそれを理解し得なかった。